― 季節が変わったら、暮らし方も少しだけ ―

9月になりました。

まだ暑さは残っていますが、朝夕の風や光に、ふと秋の気配を感じるようになりました。

季節が移ろうとき、私たちの身体もまた、少しずつ変化しています。

診察室でもこの頃になると、

「なんとなく肌の調子が悪くて」

「最近、乾燥するようになりました」

「抜け毛が増えた気がします」

そんな声を耳にします。

思えばこの夏、身体はずっと暑さの中でがんばってきました。

強い日差し、冷房と暑い屋外との行き来、冷たい飲みもの、眠りにくい夜。

特に子育て中のお母さんにとって、夏休みは子どもの食事や予定、宿題、仕事、家事と、自分のことはつい後回しになりがちな季節です。

9月になって「やっと日常に戻った」と思った頃、ふっと疲れが出てくることもあります。

そんなとき、身体はもしかすると、

「少し休ませてください」

と伝えているのかもしれません。

昔の人は、季節と身体を一緒に見ていました

東洋医学では、秋は「肺」と関係の深い季節と考えられてきました。

ここでいう「肺」は、呼吸する臓器だけではなく、鼻や皮膚など、身体と外の世界との境界にも関係するものとして捉えられています。

秋になり空気が乾いてくると、肌や鼻、喉にも乾燥を感じる。

皮膚科で日々肌を診ている私たちにとって、昔の人が季節と皮膚をつないで考えていたことは、とても興味深く感じます。

一方、アーユルヴェーダにも、

自然が変化すれば、私たちの身体も変化する

という考え方があります。

風が増え、空気が乾き、少しずつ冷たくなっていく季節には、

  • 温かくする。
  • 潤す。
  • 休む。
  • 生活のリズムを整える。

季節の変化を感じながら、その時の自分に必要なものを暮らしの中に取り入れていきます。

アーユルヴェーダで大切にされているものの一つが、

ディナチャリヤ――一日の過ごし方。

朝起きて、食べて、働いて、休み、そして眠る。

特別なことを始める前に、まず毎日のリズムを見つめてみる。

とても素朴ですが、大切な養生のひとつです。

ちょっとだけ、暮らしのヒント

古くから伝わる中国医学の書『黄帝内経』には、季節に合わせて一日の過ごし方を変えるという知恵が記されています。

秋は、**「早く眠り、早く起きる」**季節。

でも、何もかもきちんとやろうとしなくて大丈夫。

この秋、心に留まったものを、
どれかひとつだけ。

いつもより、少し早く眠る

いつも寝るのが遅くなってしまう方なら、今夜は30分だけ早く布団へ。

朝はカーテンを開けて、朝の光を感じてみる。

時計にきっちり合わせるのではなく、日の出や日の入り、風や光の変化に、暮らしのリズムを少しだけ合わせてみましょう。

温かいものを、一杯

特別なお茶でなくても大丈夫です。

いつものほうじ茶を温かくしてもいいし、カフェインを控えたい時間なら白湯でもかまいません。

温かい一杯を手にして、ほんの少し座る。

それだけでも、忙しい一日の中に、自分をいたわる時間が生まれます。

自分の肌にも、触れてあげる

お風呂上がり。

子どもにクリームを塗ったあと、自分の肌にもそっと塗ってあげる。

誰かを大切にするように、自分の身体にも触れてみる。

そんな小さな時間も、養生のひとつです。

三つ全部ではなくて大丈夫。

今日の自分にできそうなことを、ひとつだけ。

東洋医学にも、アーユルヴェーダにも、長い時間をかけて受け継がれてきた養生の知恵があります。

でも大切なのは、それを完璧に実践することではなく、

「今の私の身体は、どんな感じかな」

と、ときどき自分に尋ねてみること。

夏をがんばった身体に、

「お疲れさま」。

そして、ずっとがんばってくれた身体に、
小さく「ありがとう」を。

今月はひとつだけ、
自分のための小さな養生を始めてみませんか。

しのはら皮ふ科クリニック
篠原ひさみ