― しのはら皮ふ科から、はじめての養生便り ―

こんにちは。
しのはら皮膚科クリニックです。

これから時々、診察室を通して感じてきたことや、日々の暮らしの中で身体と心を健やかに保つための小さな知恵を、皆さまにお届けしていきたいと思います。

何からお話ししようかと考えました。

そして最初だからこそ、
私たちがなぜ今、皮膚の治療だけではなく、その人の身体や心、暮らしにも目を向けるようになったのか。

そのことからお話ししたいと思います。

皮膚を診つづけて見えてきたもの

私たちは20年以上、皮膚科の診療を通して、たくさんの方の皮膚を診てきました。

湿疹、アトピー、ニキビ、かゆみ、乾燥、脱毛。

もちろん、皮膚に起きている症状をきちんと診断し、必要な治療をすることが皮膚科の仕事です。

けれど、長く皮膚を診つづけていると、時々、皮膚の向こう側にあるものが見えてくることがあります。

眠れていないこと。

食事が乱れていること。

ずっと仕事に追われていること。

家族のことを心配していること。

年齢とともに、これまでとは違う身体の変化に戸惑っていること。

そして、言葉にはされなくても、

「少し無理をしているのではないかな」

と感じることがあります。

皮膚は身体のいちばん外側にあります。

けれども同時に、身体の内側や、その人が過ごしてきた時間を、静かに映している場所なのかもしれません。

子どもの皮膚を診ながら、お母さんを見る

なかでも、ずっと心に残ってきたのが、子育て中のお母さんたちの姿です。

お子さんの湿疹やアトピー、かゆみを心配して、一生懸命に通院される。

「夜中に何度も掻いてしまって」

「なかなか良くならなくて」

「食べ物が悪かったのでしょうか」

「私のケアの仕方がいけないのでしょうか」

そう話すお母さんの隣で、お子さんの皮膚を診ながら、ふと、お母さんの顔を見ることがあります。

お母さんも、眠れていない。

自分の食事は後回し。

仕事や家事もある。

それでも、子どものことだから頑張らなければ、と気を張っている。

子どもの皮膚を診察しているはずなのに、

このお母さんのことも、一緒に支えることができたら。

そう思うことが、何度もありました。

子どもを大切にすることと、
お母さん自身を大切にすること。

それは、本当は別々のことではないのだと思います。

お母さんが少し眠れること。

温かいものをゆっくり食べること。

ほんの少しでも、自分のための時間を持つこと。

「今日もできなかった」と自分を責めるのではなく、

「今日はこれでいい」

と思えること。

そんな小さなことも、家族の健やかさにつながっているのではないでしょうか。


「その人全体」を診る医療へ

皮膚の症状だけではなく、その人全体をもう少し診ることはできないだろうか。

そんな想いから、私たちは西洋医学による診療を大切にしながら、漢方を学び、身体の内側にも目を向けてきました。

そして今、もう一つ大切に学んでいるのが、『アーユルヴェーダ』です。

アーユルヴェーダというと、インドやスリランカのオイルマッサージを思い浮かべる方も多いかもしれません。

でも、私たちが惹かれたのは、そのもっと奥にある考え方でした。

身体だけを切り離して考えない。

心だけを切り離して考えない。

食べること、眠ること、季節、年齢、環境、心の動き。

その人を取り巻くものすべてを含めて、ひとつの「生命」として見ていく。

そして病気になってからだけではなく、

どうしたら、その人がその人らしく、健やかに生きていけるのか。

そこを考えていく。

その眼差しに、私たちは大切なものを教えてもらっているように感じています。

病名がつく、その少し前に 身体や心の声に耳を傾ける

なんとなく疲れている。

最近、眠りが浅い。

肌の調子が安定しない。

以前なら平気だったことが、少しつらい。

なぜだかわからないけれど、気持ちに余裕がない。

まだ病気という名前がつくほどではなくても、身体や心が小さな声を出していることがあります。

その声を無視して頑張り続けるのではなく、

「今の私には、何が必要なんだろう」

と、自分に尋ねてみる。

少し早く眠る。

温かいものを食べる。

季節に合わせて暮らし方を変える。

植物や香りに触れる。

ゆっくり呼吸する。

ほんの5分、自分のための時間をつくる。

養生とは、案外そんな小さなところから始まるのかもしれません。


この便りで伝えていきたいこと

これからこの便りでは、季節と身体のこと、食事、睡眠、皮膚、植物や香り、心のこと。

そして時には、子育てや仕事、年齢を重ねることなど、私たちの毎日の暮らしについてもお話ししていきたいと思っています。

西洋医学のことも。

漢方のことも。

アーユルヴェーダの古くから伝わる知恵も。

どれか一つが正しいと決めるのではなく、それぞれの良いところを大切にしながら、

「今日の自分には何が必要だろう」

と一緒に考えられる場所にしていけたらと思います。

難しい医学のお話ではなく、

読み終わったあと、ほんの少し自分の身体や心に目を向けたくなる。

そして、

「私のことも、少し大切にしてみようかな」

と思っていただけるような便りを目指します。

皮膚を診つづけてきたからこそ、
皮膚の向こうに、人が見えてきました。

その人の暮らしがあり、
家族があり、
心があり、
それぞれの人生があります。

病気だけではなく、その人を。

治すことだけではなく、健やかに生きることを。

これから皆さまと一緒に、考えていきたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

しのはら皮ふ科クリニック
篠原ひさみ